リレーエッセイ「私の育自」

“ドラマ”の楽しみ方は「育自」から学んだ

■私と「育自の魔法」との出会い
私が「育自のための小さな魔法」のワークショップに初めて参加したのは2015年の暮れのことだったと思う。その少し前に「育自」のことを知人から聞いたのがキッカケだったように記憶しているのだが、本当に最初のキッカケは何だったか、当時の記憶を辿ってもよく思い出せない。

その年は家族にとても悲しいことがあったから、たぶん、その心の回復の途上にあって自分のことを振り返りしたかったのかもしれないし、当時は会社で組織開発という組織の成長に関わる仕事をしていたので、チームの一人ひとりが成長するには何が必要かを考える過程で「育自」に出会ったのかもしれない。

いずれにしても、導かれるようにして「育自」に出会うことになった。

■自分自身を大切にすることからのスタート
当時、「育自」のことを妻や知人に話したが、「育児」と勘違いされて全く話が噛み合わなかったことをよく覚えている。その時の会話を通じて、不思議と感じたのは、人はみな自分以外の誰かのことに想いを馳せたり思いやりをもったりするのは結構得意だけれど、「自分自身」のことを心から思いやることには、意外に意識が向いていないのかもしれない、ということだった。

もちろん、それは自分自身に対しても同様だった。当時の私は、自分自身に思いやりが少し弱かった。その結果、私の育自は「自分を大切にする」からスタートすることになった。

自分が自分を好きでいるかどうか、自分が自分自身の最大の応援者でいるかどうか、自分自身を心から大切な存在として扱っているかどうか。そんなことを丁寧に少しずつマイペースで進めていった。

■時間をかけて自分自身の支援者になっていく
自分自身を大切にすることを目標に掲げてスタートした私の「育自」の過程で、私は色んな自分を発見することになった。

小さいころから必死に頑張ってきたことを思い出したり、今までの周囲との関わりの中で気になっていたことが解消されたり。時には、涙が止まらなくなるような体験もした。

自分自身が積み重ねて、辿ってきた人生のドラマの中で、自分を応援する気持ちを高めていくことができた。「育自」ってある意味自分自身のファンになることなのかもしれないと思ったりもした。おっちょこちょいで、時々感傷的になったり、急に真面目になったり。そんな自分自身の側面を一つひとつ自分の特徴として認めていけるようになったことで、不思議と気持ちが安定していったことを覚えている。

後で分かったのは、自分のファンになりきれていなかった自分が「育自」に出会ったころにはいたような気がする、ということ。

今は、「熱狂的ではないけれど、昔からことあるごとに気に掛けてきた」くらいの距離感で、自分自身のファンになり、応援も出来るようになった気がする。

ファンだから時に厳しくもあり、そして、何かやらかしても許せる。そんなおおらかさが自分自身との関係性において生まれてきた。

■どんな人にも人生のドラマがある
「育自の魔法」のワークショップの中では、自分の人生を線で描いて振り返ってみたり、自分の好きなことを書き出してみたりする。そして、それをワークショップの参加者に語り、聞いてもらったりする。

いずれも、自分以外の誰かに自分のことを聴いてもらうことになるのだが、どの瞬間でも、否定せずに聞いてもらえることで、自分の人生をドラマのように振り返ることができる。

他人のドラマは見ていて「そうなんだー」となるけれど、自分のドラマはなかなか客観的になれないもの。でも、育自の魔法では周りの人から否定せずに「うんうん」と聞いてもらえることで、不思議と安心して、客観的に自分のことを見れるようになったような気がする。

そして、その過程を通じて、どんな人にも人生のドラマがあるように、自分の人生ドラマも色々あるなと気が付いた。

案外、エキサイティングで、頑張ってきたこともあるし、ドラマチックなことも経験している。ドラマだから、喜劇もあれば、悲劇もある。バラエティー番組のようなこともあれば、とっても真面目なシーンだってある。

自分の人生がそんな豊かな経験に満ちていることを、客観的に振り返られるようになったのには「育自」の経験は大きい。

そして、自分の人生にドラマがあるように、周りの人にも人生のドラマがある。多様なドラマがいろんなところで繰り広げられて世界は出来ている。自分も他人もドラマの主人公がたくさんいて、それぞれの人生ドラマを懸命に生きている。

そう思えるようになっていった。

■人生に無駄なことは一つもない
人は、その人生のドラマを懸命に生きている。筋書きがあるようで、実はないそのドラマを生きていく過程で、その主人公である自分をどのように捉えていくのか。

ドラマというものは、平坦な道を歩むようなものではなく、単純でもなく、同じことの繰り返しでもない。起伏があって、複雑で、二度と同じことは起こらないからこそ、面白いし、見終わった後に感動したり心が震えたりするものだと思う。

人生も同じ。

自分自身の人生のすべての瞬間において、そこで起こったことや感じたこと、経験したことは、その人の人生ドラマとしての豊かさと妙味に繋がっていく。そう、一つとして無駄なことはない。

■“ドラマ”の楽しみ方は育自から学んだ
自分の人生に起こること、起こったこと、全てが人生ドラマの味わいを深めていく。

そう思えるようになったら、自分の人生の味わいを楽しめるようになり、その主人公たる自分が今からどう生きていくのか、毎日何を経験するのか、それが楽しみにもなった。

そして、今は「育自」に加えて、「育児」もスタート。
新しい「育自」のドラマのまっさらな脚本には、新しい命との関係性も加わっていく。
新しい命の変化(成長)はすごいスピード。
これからもきっとエキサイティングで筋書きのないドラマになること、間違いなし。

私は、「育自」を通じて、自分の人生ドラマの楽しみ方を見つけたような気がする。
そして、その主人公も好きでファンになった。好きな主人公のドラマは、何回見ても面白い。

そして、多分、これからのシリーズ新作も、最高に面白いに違いない。